日本のお葬式はどう変わった?家族葬が選ばれる理由と歴史をわかりやすく解説
- yukan
- 6月24日
- 読了時間: 7分

現在、多くのご家族が「家族葬」を選ばれていますが、実はこの家族葬、日本の長いお葬式の歴史から見ると比較的新しいスタイルなんです。
昔はもっと大きくて豪華なお葬式が当たり前でした。それが今のような家族中心の温かなお葬式に変わったのには、深い理由があります。
今回は、古代から現代まで続く日本のお葬式の変化を振り返りながら、なぜ家族葬が多くの方に選ばれるようになったのかをわかりやすくご紹介します。お葬式を検討されている方にとって、きっと参考になる内容だと思います。
驚きの発見!日本のお葬式には一定のパターンがあった
長年お葬式に携わってきた中で気づいたのが、日本のお葬式には興味深いパターンがあることです。
「豪華→質素→豪華→質素」の繰り返し
歴史を見ると、このようなサイクルが何度も起こっています
権力者やお金持ちの方が威厳を示すために豪華なお葬式を始める
一般の方々にもその文化が広まっていく
費用負担が重くなり家計や社会の問題となる
国や社会が「もっと質素にしましょう」という流れを作る
時代が変わるとまた新しい豪華なお葬式が生まれる
この歴史を知ると、現在の家族葬ブームも長い流れの中の一つだということがわかります。
時代とともに変わるお葬式のスタイル
古墳時代(3世紀後半〜7世紀):権力を示す巨大なお墓
豪華さの始まり
巨大古墳の建設:仁徳天皇陵古墳のような大規模な古墳で権力を表現
貴重品の副葬:金銀、鉄製品、馬具などを大量に埋葬
一般化の始まり:規模は小さいものの、古墳スタイルが庶民にも普及
質素化のきっかけ
646年の薄葬令:国が「もっと質素にしましょう」と法令を出す
国力の消耗:古墳建設に人手とお金がかかりすぎた
仏教の影響:火葬という新しい方法が伝わってきた
江戸時代(1603年〜1868年):葬列文化の頂点
この時代は、日本のお葬式史上最も豪華だった時期の一つです。
豪華さの極み
装飾された輿(こし):美しい飾りを施した棺桶
何百もの提灯行列:夜空を照らす幻想的な光景
豪華な天蓋:絹や錦を使った美しい覆い
大規模な葬列:数百人が参加する壮大な行列
深刻な社会問題へ 当時は「両親が2代続けて亡くなると家が傾く」と言われるほど、お葬式にお金がかかりました。見栄のために無理な出費をする家庭が続出し、庶民の生活を圧迫する社会問題となったのです。
幕府の規制
奢侈禁止令:お葬式の規模や装飾に制限をかける
身分による制限:身分に応じたお葬式の大きさを定める
大正時代(1912年〜1926年):告別式の誕生
新しいお葬式スタイルの登場 1901年の中江兆民さんの告別式が、現代的なお葬式の始まりと言われています。
告別式が生まれた理由
葬列への批判:「時代に合わない」「無駄が多い」という声
都市化の進展:交通の妨げになることが問題視
効率性の重視:時間とお金を節約したいという要望
これが現在まで続く「告別式」の原型となりました。
現代の大転換:家族葬が選ばれる時代(1990年代〜現在)
バブル崩壊がもたらした変化(1994年〜)
1994年のバブル崩壊は、お葬式にも大きな影響を与えました。
経済面での変化
長期の不景気:使えるお金が限られるように
雇用環境の変化:終身雇用制度の終わりで人間関係も変化
価値観の転換:見栄よりも中身を重視する考え方へ
お葬式観の変化
「故人らしさ」を重視:形式よりも故人の人柄を大切に
小規模化の始まり:経済的にも精神的にも負担の少ない形を求める
「家族葬」という名前の成功
2000年代に入ると、「家族葬」という言葉が急速に広まりました。なぜこの名前がこれほど受け入れられたのでしょうか。
1. 「家族」という言葉の温かさ 従来の「密葬」という言葉には、どこか閉鎖的で暗いイメージがありました。しかし「家族葬」という名前は、家族の絆や温かさを感じさせ、多くの方に親しまれました。
2. 社会構造の変化
核家族化の進展:三世代同居から夫婦と子どもだけの世帯へ
地域のつながりの変化:近所付き合いが薄くなった
転勤社会:一つの土地に長く住む人が減った
3. 高齢化社会の影響
人間関係の変化:高齢になると友人・知人との交流が減る
体力面への配慮:高齢の方の負担を軽くしたい
認知症への対応:大勢の人との社交が難しくなる場合も
一人で亡くなる方の増加(2000年以降)
現代社会では、一人で亡くなる方が増えています。これがお葬式をさらに簡素化する要因となっています。
新しいお葬式の形
一日葬
お通夜を省略し、告別式と火葬のみ
参列者の負担を軽減
時間と費用の節約
直葬(火葬式)
式典を行わず、火葬のみ
最小限の費用と時間
家族数名での静かなお別れ
現在の家族葬事情
家族葬が選ばれる割合
現在、全てのお葬式の約60%が家族葬で行われています。特に都市部では70%を超える地域もあり、確実に主流となっています。
一般的な家族葬の内容
【家族葬の一般的な規模】
• 参列者:10〜30名程度
• 範囲:2親等以内のご親族が中心
• 期間:お通夜・告別式の2日間または1日葬
• 会場:小規模な式場やご自宅
• 費用:50万円〜150万円程度
お葬式にかかる費用の変化
お葬式の費用も時代とともに大きく変わっています。
時代別費用の変化(現在の価値で換算)
時代 | 平均費用 | 特徴 |
江戸時代後期 | 200〜500万円 | 家計を圧迫するほどの高額 |
明治〜大正 | 100〜300万円 | 告別式の普及で効率化 |
昭和戦前 | 50〜100万円 | 戦時中の質素化 |
昭和後期 | 200〜400万円 | バブル期の豪華化 |
平成前期 | 250〜350万円 | お葬式費用の最高額時代 |
現在 | 100〜200万円 | 家族葬による適正化 |
費用の内訳の変化
従来の大規模なお葬式(1990年代)
総額300万円の内訳
• お葬式一式:150万円(50%)
• お食事代:75万円(25%)
• お花・お供え物:45万円(15%)
• その他:30万円(10%)
現在の家族葬(2023年)
総額120万円の内訳
• お葬式一式:80万円(67%)
• お食事代:20万円(17%)
• お花・お供え物:15万円(12%)
• その他:5万円(4%)
家族葬では、大人数の食事代が大幅に削減され、全体的に費用が抑えられていることがわかります。
地域による違いも
お葬式のスタイルは、地域によっても違いがあります。
都市部と地方の違い
都市部(東京・大阪など)
家族葬の割合:70%以上
平均費用:100〜150万円
特徴:効率性とプライバシーを重視
地方部
家族葬の割合:40〜50%
平均費用:150〜250万円
特徴:地域のつながりを大切にする傾向
地方では、まだ地域コミュニティとのつながりを重視する傾向があり、規模の大きなお葬式も行われています。
これからのお葬式はどうなる?
予想される変化
さらなる個性化
故人の趣味や人柄を反映したオリジナルなお葬式
音楽葬、花葬など、テーマを持ったお葬式
テクノロジーの活用
オンライン参列の普及
動画配信による遠方からの参加
デジタル芳名帳の利用
環境への配慮
樹木葬や海洋散骨の増加
環境に優しい材料の使用
歴史から見る未来予測
日本のお葬式は「豪華→質素」を繰り返してきました。現在は質素化の時代ですが、いずれ新しい形の「豪華化」が始まる可能性もあります。
ただし、次の豪華化は従来とは違う形になるかもしれません。お金をかけるのではなく、テクノロジーや体験を重視した新しいスタイルが生まれるかもしれません。
変わらない大切なこと
お葬式の本当の意味
時代とともにお葬式の形は大きく変わりましたが、変わらない大切なことがあります。
故人への感謝 どんな時代でも、亡くなった方への感謝の気持ちは変わりません。形は違っても、その想いを伝えることがお葬式の本質です。
ご家族の心の整理 お葬式は、ご家族が悲しみを受け入れ、新しい生活に向かうための大切な時間です。
人とのつながり 生きている人同士が支え合い、絆を確認する場でもあります。
どんなに時代が変わっても、大切な方を亡くされたご家族の気持ちは変わりません。私たちは、そのお気持ちに寄り添い、心に残る温かなお別れのお手伝いをさせていただきます。
この記事が、お葬式について考える際の参考になれば幸いです。
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